SKIN 特別編 「お気に召すまま」 2

潤くんの大きな手が、私の後頭部を包み込むように支える。

車の中で…
倒されたシートの上で…

重なった、柔らかな唇。
長い睫毛が私の頬をくすぐる。

親指でそっと唇をなぞられて…
近付く首元から香る、いつもの柑橘系の香りも…

どんどん私から現実感を奪う。


「…これ、付けてきたんだ。」


私の耳たぶを摘みながら、潤くんがニコッと微笑む。
そんな顔は、寧ろ可愛いくらいなのに…
その奥に潜んでいる別な顔を知っている私は、その姿を想像するだけで背筋に電気が走ったかのように、ゾクゾクと身体を震わせてしまう。


「…うん。 良く分かったね…」

「そりゃ、わかるでしょ(笑)
…すげー似合ってる。」

「…うん…」


最後の私の声は…
肯定の意味を示すものなのか…
それとも、抑えきれずに零れ落ちた、無意識のものなのか…

潤くんは、ピアスごと私の耳たぶを口に含んで…

潤くんの鼻息が、私の髪を柔らかく揺らす。
無意識に、なにかに縋る様に私の手が掴んだ車のシートが、捩る身体に合わせるように音を立てる。

潤くんの指をすり抜ける、私の短く切った髪…
物足りなさを感じているのか、潤くんの指は何度も私の髪をかきあげる。


「…潤く…ん…」

「…ん? …美紗緒さん、すげーそそるんだけど…」


首筋に、その指が触れるたびに…
潤くんの…興奮気味な吐息を聞くたびに…

私の中は、自分でもあり得ないくらいに彼を求めてた。
けど…
ここは、車の中で…
もしかしたら…
見知らぬ人が通るかもしれない、陽の光が溢れる中で…


「…ね…潤くん…ここじゃ…」


やっと絞り出すように言った私の声を、潤くんは余すことなく聞き取ってくれて…


「…ん…
…そうだよね…」


そう言ったかと思うと、速攻で身繕いを始め、彼はハンドルを握りなおす。

まさか…
こうなることを予見してた…?

そんなことを思ってしまうくらいの彼の行動力に、私は助手席でそっと息を整える。
潤くんは、ナビを操作することすらせずに…
流れるような動作で次の目的地へと車を走らせる。

ギアを握る手にそっと自分の手を重ねたら…
ちょっとだけ強張っていた顔に、柔らかな笑みが浮かぶ。


「大丈夫だよ…?
こうなることも、ちゃんと考えてこの辺の地図頭に入れてきたから(笑)」


無邪気に笑うその顔は、いつもどおりの潤くんの顔で…
けど、私は知ってる…。
その笑みの向こうに、どれだけ激しい潤くんがいるのか…

車は潮風に乗って、車のいない国道をひた走る。
窓から入る風が、荒々しく私の髪を揺らす。

潤くんは、そんな私の頭をぽんぽんと優しく撫でると、また真剣な目をして、フロントグラス越しの道を…
きっと、彼にとっては、予定通りのルートを…
当たり前みたいに見つめていた…

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