あの絵の秘密 第56話

「あ…おい……ちゃん…?」


突然、身体に力が入らなくなった俺は、冷たい床に横たわった状態で、そこに立つ葵ちゃんを見上げた。
ブルブルと震える葵ちゃんの手に握られた、それは…

実際に目にしたことはなかったけど、それが何かは俺はなんとなくわかっていた。
今の自分の状態…
突然背中に感じた衝撃と、まるで痙攣するみたいに言うことを聞かなくなった自分の身体。


「ごめんね、智くん… …ごめんなさい…」


そう言って、俺の傍らに立ち上がった葵ちゃんの手から、ゴトンと音を立ててスタンガンが床の上に落ちる。

どうして…?
どうして、葵ちゃんがこんなこと…

そう思いながらも、俺はそれを口にすることが出来ない。
身体に力が入らない。
それが、葵ちゃんが俺にしたことのせいで…

そんなこと、どうしてもわかりたくなかった。


「あはははは(笑)
あーあ…
どうしてこう… 
あんたは俺の思った通りに、動いてくれちゃうんだろうね~。」


突然、俺の耳に入ってきた、冷たい笑い声と、人のことを馬鹿にしたようなその口調。

…あ。
あいつ…。

声のした方を、やっとの思いで首だけ捻って見てみると、玄関のドアの前…
逆光を浴びた黒い姿で、あいつは俺のことをまた笑ってた。

櫻井…
おまえ…


俺の目の端で、葵ちゃんが動く姿がかろうじて見えた。
葵ちゃんは、櫻井の出現に驚く様子もなく、ただ震える手で足元のバッグの中から必死に何かを探していた。

やっぱり葵ちゃんは、あいつと…
今も一緒に…


「あのさー。
あんた、これが俺が葵にさせたことだって思ってんだろ?
けどさ…違うから。
俺はあんたと…あんま変わんないよ。」


櫻井の言葉に、俺は上手く頭を働かすことが出来ない。
俺と櫻井が変わらない…?
そんな…
そんなこと…
この状況で、そんなこと考えるなんて、普通の人間なら無理ってもんだろ…?

葵ちゃんは、まだ自分のバッグの中をごそごそと探っている。
いったい何を探してるのか…
そんなの俺にはわかる術すらない…。


「葵はさ…
あんたが思ってるような天使じゃないからな…?
いや、天使って…(笑)
そんなの全く逆なんだよな。
大体、俺があんたをこんな状態に……うっ…!」


…え?
一瞬の間をおいて、櫻井は喋るのを止めて、そのままそこに蹲るようにして倒れた。
そして、葵ちゃんの手には、俺に押し当てたのとは別の…


「ごめんね…智くん…
けど、こうするしか方法がなかったの…
私は…
私は、あなたのことが好きだけど…
翔のことも同じように好きなんだもの…」


葵ちゃんが持ったスタンガンは、俺の時と同様、葵ちゃんの手から落ちて、床の上に転がる。

…え?
ちょっと待って…

俺は、徐々に近づいてくる葵ちゃんの姿に、初めて恐怖を感じる。
けど、俺の身体には、思った以上に力が入らなくて…

ただ、彼女の姿を呆然と見つめることしか出来なかったんだ…



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